①島津忠恒、加藤清正と激突か?

忠恒率いる島津軍本隊一万が、小西行長の居城で宇土城の南に位置する白山麓に本陣を構えた。
この島津軍の援軍により、清正は一時、宇土城攻めを中断し三町ほど後退した。
「清正め、何ゆえに中央へ行かんのじゃ。西に付くも東に付くもどちらでもよいから、九州より出て行けばよいものを」
忠恒が本音を漏らす。
さすがの忠恒も清正相手だと楽には勝たせてくれない事を知っている。
加藤勢は五千ほどの兵力であるから、負けることはないと思っている。
しかし、九州制覇は始まったばかりであり出来るだけ犠牲を出したくない。
さらに北には黒田如水が動き出している。
今のところ如水は、北九州制圧のためこちらに関わってくる事はないが、いずれは雌雄を決せねばならない。
島津としては、家康と戦う前に兵の犠牲及び、時間の浪費をなくすことが前提条件である。
そこで、忠恒は隊を二つに分けた。
一つは島津忠興を大将に四千の兵が清正の本拠、熊本をかすめるように北上。
清正は、仕方なく宇土城攻めを諦め、つられるように北上し熊本に戻った。

②鬼と虎に怯える小西幸影、「宇土城」争奪戦。

忠恒は、清正撤退と同時に宇土城に入り小西幸影と対面。
「島津殿、此度の援軍、かたじけのうござりまする」
「我が小西家に出来る事あらば、遠慮なく申して下され」
忠恒が答える。
「それでは、この宇土城を頂戴致す」
「なっ! なんと・・」
「戯言じゃ。あまりよい城であったので思わずを言ったまでよ」
「そんなことしたら又、父上に叱られるでの」
忠恒の表情が変わる。
「しかし、我が島津が援軍に来なかったら、この城は落ちておったのも事実じゃ」
幸影の顔が引きつった。
<義弘殿には似ず、冷酷とは聞いておったが>
忠恒がさらに不適な笑みを浮かべる。
「それではどうじゃ、この城を暫く貸してくれんかの」
「うっつ!」
幸影は分かっていたのである。もし、島津が撤退すれば、怨恨ある加藤軍によって間違えなく皆殺しにされる。
それ程、加藤家と小西家は仲が悪かった。
「分かり申した。ただし、御願いがござる」
「此度の乱が終わり次第、返して頂きたい」
「同じものとは限らぬが、それ相応のものは必ず返す所存。島津の名にかけて約束致す」
この言葉を聞いて幸影は悟った。
<島津も天下取りに乗り出すつもりか!>


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です