家康は、苛つきが隠せない。
このまま適当に話に応じ、急いで江戸へ帰還し戦準備をするかを迷っていたのである。
その心を見透かしたように、清正が家康に言った。
「公方様、何を考えておるのでござりまする」
家康が困惑した。
この頃の公方とは将軍の事を指す。
<公方様! わしがか?>
「清正殿、今何と申された」
清正が笑顔で応える。
「公方様と言ったのでござるが」
清正は、豊臣政権終決の宣言を秀頼に促した。
隣で福島正則が泣いている。
秀頼が教えられた言葉を、そのまま話す。
「家康、その方に日の本の政権を委ねる事に致す」
清正が、言葉を繋げる。
「とはいっても、徳川家独裁ではござらぬが、島津殿の考えで進むつもりでござりまする」
家康は悟った。
<表上の政権は徳川、それを島津、伊達が糸を引くつもりか?>
しかし、孤立した家康には、最早どうする事も出来なかったのである。

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です