家康は、苛つきが隠せない。
このまま適当に話に応じ、急いで江戸へ帰還し戦準備をするかを迷っていたのである。
その心を見透かしたように、清正が家康に言った。
「公方様、何を考えておるのでござりまする」
家康が困惑した。
この頃の公方とは将軍の事を指す。
<公方様! わしがか?>
「清正殿、今何と申された」
清正が笑顔で応える。
「公方様と言ったのでござるが」
清正は、豊臣政権終決の宣言を秀頼に促した。
隣で福島正則が泣いている。
秀頼が教えられた言葉を、そのまま話す。
「家康、その方に日の本の政権を委ねる事に致す」
清正が、言葉を繋げる。
「とはいっても、徳川家独裁ではござらぬが、島津殿の考えで進むつもりでござりまする」
家康は悟った。
<表上の政権は徳川、それを島津、伊達が糸を引くつもりか?>
しかし、孤立した家康には、最早どうする事も出来なかったのである。
第十章・天下三分の計 | 島津義弘と伊達政宗の戦いが遂に決着
第10章・⑭我が人生に悔いは無し | 小説「薩摩の風に送られて」最終話
ここ薩摩島津の居城「鹿児島城」には、島津義弘と忠恒が何やら話し込んでい 続きを読む…
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第10章・⑨釣り野伏せ・改 | 家康に言葉での「釣り野伏せ」を仕掛ける島津義弘 · 2023年2月19日 12:36 AM
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