家康が天海を呼びつけた。
天海が部屋に入り、家康の心を見透かしたかのように話す。
「家康殿、迷っておられるな」
家康は、豊臣方の思惑を風の噂で聞いている。
豊臣方というより、島津義弘がという事も。
「おのれ、義弘め」
手の爪を、噛む癖が始まる。
家康は、苦労の人生を回想した。
幼少より今川義元の人質となり、解放されると織田信長がいた。
信長が、本能寺で明智光秀の謀反で世を去ると、今度は羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)が立ちはだかった。
海道一の弓取りと評されながらも、二番手に甘んじてきたこの男は、決して天下取りの野望を諦めることなく、
着実に実力を付け辛抱強く好機を待ち続けた。
今回も三成を利用し、豊臣恩顧の武将の分裂そして、前田家、佐竹家をはじめ対抗勢力の牙を抜き、全てが計画通りに進んでいた。
しかし、又もあと一歩の所で思わぬ敵が現れた。
<まだ終わったわけではない>
第十章・天下三分の計 | 島津義弘と伊達政宗の戦いが遂に決着
第10章・⑭我が人生に悔いは無し | 小説「薩摩の風に送られて」最終話
ここ薩摩島津の居城「鹿児島城」には、島津義弘と忠恒が何やら話し込んでい 続きを読む…
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