①仙道の毒蜘蛛「大内定綱」が安俵城へ。
南部勢がこもる安俵城に大内定綱が使者として訪れた。
大内定綱は、形式的な挨拶をする。
「何用じゃ! 降伏はせぬぞ」
「外をみなされ。こんな小城に八千近くの兵が十重二十重に囲んでおるのですぞ。それに、見たところこの城に入ったのは、千にも満たない数では」
「ふん! それがどうした」
「降伏しては如何でござる。今なら我が殿はお許しになる筈」
「それとも南部家を滅亡させまするか?これを見てくだされ」
南部配下の豪族が、伊達成実宛てに服することを誓った誓書である。
<あやつら>
南部信直の覇気は、徐々に小さくなる。
沈黙すること暫く。
②南部信直の隠居
南部信直が静かに口を開いた。
「して、条件は?」
「信直殿の隠居。南部領の花巻以南を伊達家の所領とする事。利直殿の嫡男を人質とする事 以上」
大内定綱が静かに応える。
「わしが隠居」
「よいではありませぬか。利直殿にお任せ致し、そろそろゆっくり休まれては」
信直は利直を見つめ舌打ちする。
父の心中を察し、利直が返答した。
「条件承知」
信直は渋々承諾し、これにて南部家は事実上、伊達家の配下となった。
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