罠に掛かる小早川秀秋、「釣り野伏せ」の餌食に。
この日も、豊久率いる島津勢が小早川に襲い掛かった。
秀秋が燃えている。
<細川忠興め、昨日言った事を証明してやるわ>
豊久軍が攻め立て、例の如く引いた。
すると秀秋が追撃命令を出し、追い立てて来た。
豊久は、前日の忠恒の言葉を思い出した。
<ほお、本当に来たな>
豊久が逃げた後、島津忠興率いる伏兵が小早川勢を囲みこむ。
しかし、不思議な事に毛利勢の援軍は来なかった。
毛利勢は、前日密かに決めていたのである。
もし、小早川勢が釣り野伏せに掛かった時は、小早川勢を見捨てると。
毛利勢としては、対陣が長引くほど援軍がやって来る。
完全に余裕が出た状況で一気に勝負を着けるつもりでいた。
そのために、今は我慢すると決めていたのである。
島津としては、小早川勢を討っただけでは勝ちにならない。
後には、まだ四万以上の兵が目の前にいるからだ。
しかし、忠恒は小早川の大軍を逆に利用したのである。
島津忠恒、島津豊久、「釣り野伏せ」を応用する。
小早川勢を取り囲んだ兵が、突如後方のみを開放した。
それを見た小早川勢がそこから必死に逃げ出す。
それを見て忠恒が下知を飛ばす。
「今じゃ、小早川勢の後を追うように、どさくさに紛れ毛利陣へ雪崩込め」
島津勢は、可能な限り小早川勢を横にそれる事なく、毛利陣へ敗走させる。
小早川勢は、味方の毛利陣へ津波の如く殺到した。
毛利勢は、味方である小早川勢に鉄砲を撃つわけには行かない。
<こっちに来るな>
島津勢は、小早川勢を防波堤にした形で毛利本隊へ雪崩込んだ。
白兵戦になったら、島津は最強である。
一瞬にして、毛利軍は混乱状態となり敗走を始めた。
そして、島津勢はその後、山陰の石見方面へ怒涛の如く雪崩込むのであった。
0件のコメント