上杉軍前衛に接近する「小野寺義道」

翌日、政宗は罠を見極めるため、少数部隊を送り出す。
出羽攻めにて、降ってきた小野寺義道がこれを受け持った。
こういう役割は、必ずと言っていいほど新参者がやらされる事になる。
その新参者は、そういう役割を忠実にこなし、信用を得ようとするものである。
政宗が勇む義道に声を掛ける。
「義道殿、罠を見極めるだけでよい。無理をせずともよいぞ」
政宗は敵には非情であるが、味方となると気さくな部分を見せる。
こういうところが、独眼龍と恐れられながらも人気がある理由であろう。
小野寺勢がじりじりと前進する。
「慌てるな、ゆっくり近づけ」
上杉前衛の鉄砲隊との差が百メートル程に迫った。
その瞬間、小野寺勢の兵が叫び声を挙げた。
落とし穴に落ちたのである。
上杉勢は、伊達勢が米沢にくる何日前から陣を引き、落とし穴を掘っていたのであった。
単純であるが一番有効な罠であり、馬鹿には出来ない。
もし政宗が、一斉に攻めかかっていたならば、大損害をこうむる事になっていた。
騎砲隊でも投入しているものならば、その被害は甚大である。
小野寺勢が穴に落ちると同時に上杉方の鉄砲が小走りに前進し一斉に火を噴いた。
「よし、引けっ」
小野寺勢が退却に入る。


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