三成が伏見へ移動した。
三成の姿が大坂城より消えると、ますます家康の横暴があからさまになってきた。
ご法度である諸大名との勝手な縁組を行うなど、歯止めがきかない状態となる。
正信が大声で騒いでいる。少々大袈裟である。
「殿、との! こんな所におってはあぶのうござりまする!」
そこに五奉行の一人、増田長盛が駆け込んで来た。
「如何致した」
「如何も何もござらぬ。わが主、家康を暗殺する者がおるとの噂が流れておりまする」
長盛は驚き、答える。
「まさか! こちらでお調べ致すが、安全のため伏見へ帰っては如何でござるか?」
「そのようにいた....」
正信が言い掛けた時、家康が叫んだ。
「なんでこのわしが逃げねばならんのじゃ。そんな噂で逃げたとあっては笑いものじゃ。噂の真偽が分かるまで大坂を動かぬぞ」
こうして家康は、大坂城西の丸へどっしりと腰を落したのであった。
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