プロローグ~1.伏龍

「死んだか・・」
満面な笑みを浮かべるのは、内大臣(内府)こと徳川家康である。
日本でこの時を一番待ったのが、この家康であろう。
「半三、すぐに正信を呼べ」
姿を消す半三。
半三とは、かの有名な忍び服部半蔵正成の子「半三正就」である。
徳川にはもう一人半蔵がいる。
徳川旗本の渡辺半蔵守綱であるが、槍使いの達人であることから槍の半蔵と呼ばれている。
半蔵正成と共に、徳川両蔵と謳われた。
「遂に死んだか・・随分と待った」
家康はこれまでの人生、苦労の連続であった。
幼少より今川義元の人質となり、解放されると同時に織田信長という偉大な漢が存在した。
信長が本能寺で明智光秀の謀反で世を去ると、今度は羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)が立ちはだかった。
海道一の弓取りと評されながらも常に二番手に甘んじてきたこの男は、決して天下取りの野望を諦めることなく着実に実力をつけてきた。
今まさに、伏龍の如く沼中から天に上る機会がやって来たのである。

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