加藤清正と会うため、唯一人乗り込む、島津義弘。

島津義弘が熊本城へ来た。

九州で唯一島津の手に落ちていないのは、ここ熊本だけであった。

天下の堅城熊本城と、猛将、加藤清正であるからこそ、ここまで持ち堪えていられたのである。

熊本城は、騒ぎになった。

島津義弘自らが、わずかな護衛のみで熊本城に入ったからである。

加藤清正の子、正影が勇む。

「父上、いい機会ではござらぬか。義弘を人質にとれば挽回できるかも」

清正が怒る。

「馬鹿もの、そんな卑怯な真似が出来るか!」

「しかも、義弘殿は交戦中の敵中へ、僅かな人数で来ているのだぞ」

「丁重に通せ」

義弘が入って来た。

「清正殿、久しゅうござるな」

清正が丁重に応える

「はあ。こんな形で会うとは思いもよりませなんだ」

清正は、義弘を尊敬している。

朝鮮の役でも、義弘が二十万の明軍を破らなかったら、日本軍は皆殺しになっていた可能性が高い。

清正以外でも、義弘は多くの武将から尊敬されていた。

関ヶ原での敵中突破時、東軍が道を開いたのも、そういう経緯があったからである。

「ところで、清正殿。秀頼様が家康に大坂城を追い出された事を知っておられるのか?」

「そ、それは誠でござるか?」

「宇喜多殿の岡山城へ避難したらしい」

清正が珍しく動揺する。

三成嫌いから家康に力を貸そうとしたが、豊臣家第一である思いは変わらない。

「清正殿がいなければ、豊臣家は滅亡しますぞ」

義弘曰く、加藤清正と福島正則は、まだまだこの時代には必要である。

清正は考え込む。

<なんという、馬鹿なことをしてしまったのじゃ>

義弘は、清正に伊達との連携の話、将来の構想、もはや豊臣家天下ではない事を話した。

「もはや如何あがいても豊臣家の天下はない。それでも豊臣家を一大名として存続は出来るのではないか?」

義弘は清正を見つめた。

「おぬしや、福島殿がおればな」

清正が義弘に何かを頼もうとしたが、言い出せない。

現在、敵である者に頼み事をするなど出来ないのであろう。

そんな清正の心中を察して、義弘が口を開いた。

「清正殿、岡山へ行きなされ。その間は島津が責任もって援護しますぞ」

清正はさらに考え込む。

そこで義弘が少々力強く言い放った。

「迷っている時ではござるまい」

清正が涙する。

「かたじけない」


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